人事制度改革とともに始まった新たな等級育成の挑戦。“視座”を育む体験型研修とは | Marketing Town(マーケティングタウン)
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導入企業インタビュー

人事制度改革とともに始まった新たな等級育成の挑戦。“視座”を育む体験型研修とは

「なんでも酒やカクヤス」の運営をはじめ、物流を基盤とした多様な商品の受注・配送・決済をワンストップで提供する販売プラットフォーム事業を手がける株式会社ひとまいる様では、人事制度の改正により新たに生まれたM0等級(課長代理)に対する研修としてマーケティングタウンをご導入いただきました。

 

株式会社ひとまいる

人財創造部 DEIキャリア開発推進課 

金子 様 宮本様

 

新たな等級の設定と育成方針の刷新

マーケティングタウン編集部(以下、編集部):

導入した背景や目的を教えていただけますか?

 

金子様:

2019年に東証二部(現:東証スタンダード)へ上場したことを契機に、「より一層、人財育成に対して体制を強化していかなければ」という意識が社内で高まりました。人的資本経営や、上場企業として求められる対外的な取り組みも含め、この5年間で会社全体が大きく変わってきたと感じています。

 

その流れの中で、人事制度についても年功序列ではなく、若手の意見を取り入れた運用へと見直すことになりました。2023年10月には、リーダークラスから課長等級(M1)に一足飛びで昇格する従来の仕組みを改め、その手前に「M0等級(課長代理)」を新設しました。

 

これまでは、実務能力を評価して課長に昇格するケースもあり、結果的に本人やチームに負荷がかかることもありました。そこで、M0層に対しては、事前に研修を行い、段階的に育成していく体制を整えました。この制度改定とあわせて、新たに「人育成方針」も掲げています。

 

宮本様:

この育成方針には、これまでのように年功序列で評価するのではなく、自ら市場価値のあるスキルを身につけようとする人財を育てたいという思いが込められています。いわゆる「エンプロイアビリティ(雇用される力)」の向上を目指し、会社としても支援していきたいと考えています。

 

その一環として、M0に求める基本スキルを「自己理解」「考え抜く力」「マネジメント能力」「情報収集力」の4つに定義しました。加えて重要なのは、M0としてだけではなく、次のM1を見据えた視座を持つことです。

 

M0として必要なスキルを身につけつつ、M1で求められる「組織設計」「経営の基礎知識」「部下育成」にも意識を向けることができるよう、リーダーシップに加え、会社経営を疑似体験しながら経営視点を学べる「マーケティングタウン研修」の導入を決めました。

 

会社の未来を担う存在へ。経営視点を育む研修で成長を後押し

編集部:

今回研修を受講した対象者の方について教えていただけますか?

 

宮本様:

そうした制度改革が背景にある中で、M0等級に必然的に昇格した方々だけでなく、抜擢人事によって飛び級でM0等級に就いた若手の方々も多く受講いただきました。

今回の研修の企画にあたっては「将来の課長候補を育てたい」という思いがあったので、手上げ+推薦による形式でのメンバー選出おこないました。

また、全社的に展開し、部署を問わず様々なメンバーが参加しており、大阪や九州といった拠点からも参加していただけるように実施をしています。

 

全体として、ボトムアップを促進していきたいという思いはもちろんありますが、それ以上に「自律的なキャリア支援」をしていきたいと考えています。

 

つまり、自ら頑張りたいという意志を持っている方々に対して、会社としてより手厚い支援をしていきたいと考えています。若手の中でも、リーダーを育てていくことは、会社の成長にとって非常に重要な要素となるからです。

 

特に今回「M0(課長代理)」として任命された方々は、まさに今後の会社のキーパーソンとなっていく存在として、経営視点で主体的に関わっていってほしいという思いも込めています。そのような意識を持ってもらいたいという願いから、この研修への参加をお願いしました。

 

求めるスキルをゲームに組み込む?マーケティングタウンの可能性とは。

編集部:

導入の決め手はなんだったのでしょうか?

 

金子様:

実はもともと、マーケティングタウンという研修プログラムは以前から知っていて、「どこで導入したら一番効果的だろう?」という話をしていたんです。その時に、「ちょうどM0層が一番ハマるかもしれない」と判断し、導入を決めました。

 

最初は「マーケティング」という名前から、マーケティング領域に特化した研修という印象を持っていましたが、実際にはさまざまなテーマに応用できる柔軟性の高いプログラムであることがわかりました。

M0に求める4つのスキルである「自己理解」「考え抜く力」「マネジメント能力」「情報収集力」と上手く掛け合わせてアレンジできるのではと感じ、リーダーシップ要素などについてもご相談させていただきました。

 

宮本様:

また、これは私の個人的な思いでもあるのですが、研修というものに対する”抵抗感”を払拭したい思いがありました。

だからこそ、「学ぶことって楽しい」「また受けたい」と感じられるような研修を、この機会に実施したいと考えていました。

 

ひとまいるには“チームを盛り立てるのが得意な方”が多く、マーケティングタウンの研修スタイルとひとまいるの社風はすごく相性が良いのではないかと感じました。そして、研修が“イベントのように楽しみながら学べる”体験になれば、会社全体にもポジティブな影響が波及するのではないかと期待していました。

 

特にM0層は、これから会社の中で大きな影響力を持つ存在になっていくたちです。そのたちが「楽しかった!」「学びになった!」「また受けたい!」と思える研修を体験することができれば、「あの研修よかったよ」「勉強になるし面白いよ」と他の世代にも伝わり、“学びの好循環”が生まれることを願っています。

 

設計と連携が学びを深めた。M0に最適化された体験設計

編集部:

研修を実施してみて良かったポイントを教えていただけますか?

 

金子様:
研修全体としては、受講者の反応もとても良くて、最初は戸惑いながらも、チームの中で自然とのめり込んでいく姿が印象的でした。ゲームを通した体験により、普段関わらないメンバーとの交流もあり、参加者同士の距離感も一気に縮まりました。

ゲームだからこそ引き出される個性や発言、普段では見られない役割分担が自然と生まれ、講義型研修やグループディスカッションでは難しい交流も実現できたと思います。

 

学習内容については、マーケティングに関する知識や用語に対する理解度には個人差が大きく、特に抵抗感や先入観など、受講者の認識の違いが目立つと感じていました。そのため、今回の研修においてファシリテーターの皆様には、初めて聞く方でもすっと理解できるような、わかりやすく丁寧な説明を事前の打ち合わせでもお願いしていました。

そうした対応も含め、ファシリテーターの皆さんの存在が、リラックスした雰囲気をつくってくださったことも大きく、非常に学びやすい環境が整っていたと感じています。

 

中には「経営視点で物事を考えたことがなかった」という受講者もいましたが、座学だけではなく体験を通じて学ぶことで、“腹落ちする学び”になったと感じています。

今後も、「伝えたいことをどう体験として落とし込むか」「どんな要素を加えればより効果的か」といった視点で、一緒に設計していければと思っています。

 

宮本様:

また、リーダーシップ要素の設計については、

M0としてどのようなスタンスで研修に臨んでいただくかを社内で議論し、今回は「まずM0層としての役割や視座をしっかり身につけたうえで、その先のM1を見据える」という方向で整理し、育成方針を設計しました。

 

その考え方をゲーム内にも反映し、リーダー役をつとめる番になったらゲーム内のチームメンバーをまとめ、成果を上げるための実践を組み込みました。

また、「このリーダー役はM1の視座に近い」といった説明を交えながら、各チームで役割を交代していくようにしていただきました。

この“目線合わせ”についても、ファシリテーターの方々と事前に丁寧にすり合わせをさせてもらえたことは印象に残っています。

 

今回、あえて難易度を高めに設定した部分もあったのですが、それは「現場の今だけでなく、将来のために必要な知識と視点に気づいてもらいたい」という狙いがあったからです。

その意味でも、「新たな可能性や価値を見出す重要性」を感じてもらえたことに大きな手応えを感じています。

 

研修をきっかけに、自分のリーダー像に出会う

編集部:

受講した方の反応はいかがでしたか?

 

金子様:

今回のような“目新しい研修”を体験すること自体が、受講者の記憶に強く残る要因になったと思っています。アンケートでも、「初めての内容でとても楽しかった」「面白かった」という声が多く寄せられており、その一方で「難しさもあって悔しかった」「もう一度やり直したい」という感想も見られました。

 

それだけ本気で取り組み、のめり込んでいたということだと思いますし、「次にやったらもっと上手くできると思う」と感じてくれたことが、非常に嬉しかったです。

全員が立ち上がって話し合い、常に議論が絶えないような、あれだけ夢中になれる研修というのは、なかなか他にないと思います。

実際に研修が始まってからは徐々に慣れていき、参加者の雰囲気も前向きに変わっていったように思います。中には、「今回の研修に立候補した時点で、自分は“会社から期待されている”と自覚した」という方もいて、最初は戸惑いながらも、「この機会をチャンスに変えたい」という気持ちで取り組んでくれていたのではないかと感じています。

 

このように、「自分なりのリーダー像」を受講者自身が見つけ、行動に移していこうとする姿勢が見られたことは、非常に嬉しい変化だったと思っています。

 

気づきを持ち帰り、視座が変わる

編集部:

研修を経て、見られた変化はありましたか?

 

金子様:

今回の研修を通じて、「自分にはこの視点が足りていなかった」とか、「こういった観点はあまり意識していなかった」という声があり、受講者の多くが、“気づき”を持ち帰ってくれたのではないかと感じています。

 

そうした「気づく機会」をこれまで十分に与えられてこなかったのではないか、という反省があたので、今後はこういった機会を積極的に用意していきたいと感じました。

 

アンケートを通じて見えてきたのは「自分なりにできることを少しずつ実践している」という前向きな回答が多くあったことです。まずは“小さな一歩”からでも行動を起こすことが、将来的な変化につながると思っています。

 

また、「視座を高く持つ必要があると感じた」という声もありました。「視座」という言葉を受けて、参加者がそれぞれ「自分の視座ってどこにあるのか」「どんな視点が足りていないのか」と、考えるきっかけになったのではないかと感じています。

 

これまでは「自分の部署がうまく回っていればそれでいい」という考え方の方も多かったと思います。しかし今回の研修を通じて、「もっと横のつながりを持った方がいい」「会社全体で見たらどうか、という視点が必要だ」といった考えに切り替わった方もいたようです。

 

もちろん、そういった視点を持ったからといって、すぐに大きな行動ができるわけではありません。現時点では権限がない人も多いですし、部署間の連携がまだ薄い場面もあると思います。

それでも、「そういう視点があるか・ないか」だけで、日々の判断や考え方は大きく変わってきます。

参加者の中に、そうした視座の変化を得た方がいたことを実感できたのは、この研修の成果のひとつだと考えています。

 

今後NEXERAに期待すること

編集部:

今後、NEXERAに期待することがあれば教えてください。

 

金子様:

NEXERAさんへの期待という意味では、すでに十分に対応いただいていると感じています。決まった研修の型を押し付けるのではなく、私たちの要望を柔軟にくみ取って反映していただけている点は、本当にありがたいです。

 

今後としては、社内でマーケティングタウンをどうブランディングしていくかを、人事主導で戦略的に進めていきたいです。また、「キャリアデザイン」など、別の観点からの研修コンテンツにも非常に関心があります。

 

私たちとしては、新卒、若手リーダー層、中堅社員、職種別、階層別といった形で、研修パッケージを体系的に設計していきたいという構想があり、ちょうどインスタグラムで偶然キャリアメーカーを見かけて「これ、面白そう!」と思い、すぐに問い合わせをしたぐらいです。

 

また、最近では「1on1を制度化し、コミュニケーションを統一的かつより効果のあるものにしていきたい」と考えており、これも人事としての今後の課題の一つです。全管理職が1on1を安定的に運用できるよう、段階的な研修設計が必要だと感じています。

一度や二度の研修で習得できるものではないと思うので、イメージしやすく、継続しやすい学びの仕組みがあると、非常に導入しやすくなると感じました。

 

宮本様:

NEXERAさんのファシリテーターの皆さんは、進行や空気づくりがとても上手なので、今後他のテーマでもぜひご一緒できたら嬉しいです。

 

研修内容そのものに関しても、参加者の興味を掻き立て、“個々の能力を開花できる”ような、そして「また受けたい」と自然に思えるようなプログラムが理想です。その意味で、今回の研修は非常に良いスタートだったと感じています。

 

改めて、今回の研修を通じて感じたのは、「学ぶことの楽しさを体験できる研修」や「前向きに取り組める研修」を設計するにはどうすれば良いのか、という問いに向き合う必要があるということです。そうした知見やヒントを基に、NEXERAさんと一緒に考えていけたらと期待しています。

 

目指すチーム・組織像

編集部:

今後目指すチーム・組織像を教えてください。

 

金子様:

今回のマーケティングタウンを受講したメンバーの中には、すでにM1(課長)へ昇格した方も複数います。

私たちのミッションは、「こういうキャリアの道がある」「努力すればこんな未来が見えてくる」といったビジョンを示し、それを実現できる人財を育てていくことだと考えています。

 

学びを前向きに捉え、自分の強みに気づいて発揮できる環境をつくることが、私たちチームの役割です。「全力で楽しむ」という文化がある会社なので、研修も義務ではなく、楽しみながら提供したい。そして受講者にも、全力で楽しんでもらえる機会にしたいと思っています。

 

もちろん、楽しさだけではなく、学びの本質をどう届けるかのバランスも重要です。

少しずつではありますが、「学びたいと思ったときに選べる環境」には近づいてきたと感じています。

 

今回のM0向け研修は、いわば第一期生。今後第二期・第三期と続く中で、特に大切にしているのは「当事者意識」です。

自分ごととして考え、チームをどう導いていくかに真剣に向き合える人を育てたい。そのために必要な“気づき”や“視座の転換”を提供できるよう、今後も研修設計に力を入れていきたいです。

 

「このグループで働けてよかった」「この機会で学べたことが大きかった」と思ってもらえるような場を、これからもつくっていきたいですね。

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